先日読み始めました山崎豊子氏の「白い巨塔] 読み終わりました。
ベストセラー小説だけあって、とても読み応えがありました。興味がある方はぜひ読まれることをおすすめします。
山崎豊子氏の作品は難しくて読みにくいイメージでしたが、私の年齢がいったせいか一気に読み終えました。
この小説、時代的には昭和40年ごろですので、ちょうど私が生まれたころです。
くわしくいうと、もともとの「白い巨塔」にあたる第3巻の新聞連載が終わったのが昭和40年の6月13日だそうで、わたしの生まれる10日ほど前ですな。
(わたしの生年月日は昭和40年6月24日)
そういうこともあり、この作品には親近感を感じています。
新潮文庫ではいまでこそ「白い巨塔」全5巻になっていますが、当初は文庫でいう第3巻まででいったん終わり。その後「続白い巨塔」が書かれたそうです。
もともと本編は財前教授が裁判に圧勝して、正義を貫こうとした里見教授が大学を追われるという、悪が完全に勝つという話で終わったところ、読者から「小説にしても社会的影響を考えてもっと違ったストーリーを考えてほしい」という声にこたえて、続編を書いたそうです。
確かに、第3巻までで終わってしまうと、水戸黄門が印籠を出さずに終わってしまうような感じで、いたたまれません。
世の中真っ暗な感じでモヤモヤ感がすごいです。
ただ、個人的な感想としては、悪が完全に勝って終わるという当初の終わり方のほうが社会派小説としての完成度としては、そのほうがよかったのではないかという気がしなくもありません。「続白い巨塔」の部分までのほうが読者の気持ち的には救われるし、ストーリーとして完結した感じではありますが、第3巻で終わったときに読者から大きな反響があったというのはよくわかるぐらい、モヤモヤします。
ただ、現在「白い巨塔」として一本化されているところをみると、ひとつの作品として評価されているのではないでしょう。
「続白い巨塔」だった部分で、わたしがどうしても違和感を覚えたのは、読者を意識してか財前教授を訴えたほうがよく描かれている感じがしたことです。
というのは、「勇気をもって真実の証言をしてください!」と柳原医師に弁護士がいうところで、真実を言ってしまったら人生が台無しになってしまうことに弁護士が無頓着すぎる感じがしました。里見助教授は実際大学を追われたわけですし、普通は柳原医師が黙っていてもせめられないんじゃないでしょうか。
もちろん、自分のためには平気でうそを言うのも、人としてはどうかと思いますが。。。