山崎豊子氏の「約束の海」読みました。
これは、山崎豊子の最後の作品です。ご本人は非常に体力が持たないと年齢を機にされていたそうですが、年齢を感じさせない作品となっています。
ただ、やっぱり完成されず途中で終わっているので、物足りなさを感じるのは仕方ありません。
実のところ、わたしは未完成作品と知らずに読んでしまったので、読み終わったときとても不完全燃焼になりました。
救いは、山崎豊子氏が残した資料を基に、どういうストーリーの予定だったかはわかることです。やっぱり、その後どういう展開になるか知りたいですもんね。
そうはいいながら、残された資料では、主人公とヒロインがどうなっていくのか描かれていません。できればハッピーエンドを期待しながら読んでいたものですから、そこの部分が特に消化不良です。
映画の世界で、潜水艦ものは当たるというジンクスがあるそうです。これは洋の東西を問わずです。
潜水艦はなにか人の心をひきつけるものがあるんでしょうか?
潜水艦といえば、吉村昭氏の「総員起こし」という小説を思い起こします。
これは、第二次世界大戦中に沈没してしまった、日本の潜水艦が戦後に引き上げられたとき、潜水艦の中が真空状態で無菌になっていたので、中に入ってしばらくは、残された人たちがあたかも生きているような姿で残っていたという実際にあったお話です。
特に、その潜水艦の話が残っているのは、海外などで潜水艦がそうして官邸に沈んでしまうと、艦内では人間の醜い姿があからさまになってしまうものらしいですが、その日本の潜水艦では、艦内に残されたメモによると一切そのようなことはなかったことが伺えたそうです。
実際、そういう状況に自分が置かれたら、わたしは耐えられないでしょうね。
「約束の海」の話からはずれてしまいましたが、この小説も潜水艦が主役という意味で、潜水艦の描写のところからいきなり吸い込まれてしまった印象があります。やっぱり潜水艦は何か人間を引き込む魅力があるらしい。。。
作者が途中で亡くなられて描かれることはなかったのですが、この小説の柱のひとつである、真珠湾攻撃の際に捕虜になった方の話があります。
個人的に、以前からものすごくその人はその後どうなったんだろうと興味があったので、小説とはいえ詳しく知りたかったなあと残念でなりません。
もちろん、小説ですからフィクションが入ってしまうでしょうが、そういう人の物語の作品が世に残ってほしかったですね。
戦争体験をした人がどんどん亡くなっていき、日本は平和ボケと言われています。戦争体験をした人たちと生で接したことがある昭和40年生まれもそろそろ減り始めています。